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いまのは普通のトリテでしたね「アメリカンブックショップ」

すぎもとです。本日は「アメリカンブックショップ」というカードゲームをご紹介しましょう。このゲームには二つの大きな特徴がありまして、それは

  • 本屋さん発の本をテーマにしたゲームで、小説がついてくること
  • とても面白いトリックテイキングカードゲームであること

というものです。そのどちらの要素もすぎもとにとってとても「刺さる」ものです。本はあまり読まないけどボードゲームが好きな人も、ボードゲームはそんなに知らないけど本をテーマにしてるならやってみようかなって思う人も、興味を持って欲しいなと思います。

このゲームを販売している「双子のライオン堂」さんは、本読みの世界でも知る人ぞ知るマニアックな本屋さん。著名人が本のセレクトして棚が作られていたり、本棚の写真を送るとそれに会わせてセレクトした本が送られてきたりと、「本の目利き」を前面に押し出した本屋さんです。すぎもとは、ライオン堂さん白山に店舗を構えていた頃に、ボードゲームイベントをされていて、そこに参加したことや、ライオン堂さんが主催する本屋に関するエッセイコンテストに投稿して佳作を頂いたしたこともあり、ゆるーく縁のある本屋さんです。

この「アメリカンブックショップ」も本屋さん発のゲームならではの作りをしています。まず箱が本の形をしていてとてもカッコイイ。そして、カードゲームの世界を補完するような物語が同封されています(折り本を作るようになっています)これはゲームをプレイする上でルールには何も関係ないのですが、その世界を知るためには必要な物語です(ボードゲームの世界ではフレーバーテキストと言ったりしますが、ここはフレーバーノベルと呼びたくなります)

まだ携帯電話もなかった頃、古本屋で仲間たちと考え出した本を使ったゲームで笑い転げていた時代。このカードゲームはそんな小説家の思い出があらすじになっています。

こうやって紹介すると、見栄えや背景となる物語だけがこのゲームの魅力なのかと感じる方も居るかも知れませんが、いやいやそんなことはないんです。これ「トリックテイキング」のカードゲームとしてもめちゃくちゃ面白いのだからすごいんです。なんですかね、イケメンで性格も良いみたいな。天は二物を与えたもうたみたいな。そんなカードゲームなんです。

このブログはボードゲームファンの方がお読みなることが多いと思うので、トリックテイキングというゲームについては知ってるものとして普段なら説明しませんが、この記事は本読みの方にも読まれるかも知れないのでトリックテイキングについて簡単に説明します。トリックテイキングというゲームは、「プレイヤーが順番に手札カードを出し、出たカードを獲得する」という「トリック」とよばれるミニゲームをたくさん繰り返し、最終的にトリックの総合的な結果としてゲーム全体の勝ち負けを決めるカードゲームのジャンルを言います。「トリック」で誰かがカードを獲得することを「トリックテイク」というので、そういう名前の総称になっているんですねー。

トランプゲームでいうと、世界的に有名な「コントラクトブリッジ」とか日本でよく遊ばれている「ナポレオン」などもトリックテイキングです。ちなみにトランプでいう♠♥♦♣マークのことをスートと言いますが、このゲームもトランプと同じ4スート。これが最初の物語と繋がっており、それぞれが本にちなんでいるんですね。

  • 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」
  • ヘミングウェイ「老人と海」
  • プルースト「失われた時を求めて」
  • セルバンテス「ドン・キホーテ」
4スート

さて、ルールはざっとこんな感じです。

  • 親となった人が手札から好きなカードを1枚出す
  • 隣のプレイヤーは親が出したカードと同じスートが手札にあればかならずそれを出す、なければ好きなカードを出す
  • 親から順に出したカードの数値を足していき、合計値が一定数を超えていれば越える数値のカードを出した人がただちにトリックをとる(いままで出たカードを全部獲得し、あとのプレイヤーはもうカードを出せない)
  • 全員カードを出しても合計値が規定数値を越えていなければ、親が出したカードと同じスートでいちばん高い数字のカードを出したプレイヤーがトリックをとる(出たカードを全部獲得します。よくあるトリックテイキングのルール)

という行動を繰り返していきます。トリックテイキングを知っている方向けに言うと、「マストフォロー・切り札なし・ノービッド」のトリックテイキングです。

普通のトリックテイキングとは、トリックの取り方がふたつあるところが変わっています。そして、この合計値を越えることで「トリックが途中で終わることがある」が非常に面白いんです。

普通のトリックテイキングだと後にカードを出す人ほどはそのトリックを取るか取らないかをコントロールしやすいんですが(必ずコントロール出来るわけでもない)このゲームは途中で数字がオーバーしたら終わっちゃうので最後までいかないことも多いのです。前のほうの手番の人が大きめの数字を出して、どのへんでトリックを終わらせるかということをある程度考えることも出来ます。

たいていは、数字がオーバーして途中でトリックが終わってしまうのですが、たまに複数枚ある0のカードが使われたりして、最後のプレイヤーまで珍しくトリックが回ると「おお、いまのは普通のトリックテイキングでしたね!」というじわじわおかしなセリフが語られたりします。そう、これは「普通のトリックテイキング」ではないのです!

ちなみに、トリックが途中で終わるということは手札の減り方がプレイヤーによって異なってくることを意味します。なので、このゲームは、誰かの手札がなくなったら1ラウンドおわり、です。

得点計算も(こちらは類似のゲームがありそうですが)うまくかみあっていてたいへん面白い。カードは基本的に一枚マイナス1点なんですが、同じカードをたくさん集め、その数が他のプレイヤーに比べて単独一位であれば、一枚プラス1点になります。このひねりもよくできていて、単独一位にならないとプラス点に出来ないのでうまく同じマークを集めてる人を二人に散らすとどちらにもマイナスを押しつけることが出来たりします。

さらに、ゲーム終了時に手札を持っていたら、手札から獲得したカードに足してもいい(足さなくてもいいのでマイナスは増えない)というルールになっています。自分が特定のマークで単独一位だと思っていたら、手札からカードを足されて逆転された、というドキドキが生まれています。こちらも非常に良いスパイスになります。

次の親プレイヤーの決め方も地味に面白い。前ラウンドまででいちばん得点の低い人が「だれが親になるか」を決めるんです(親は自分でも良い)

出来ることは手札から出すだけなので、完全にゲームをコントロールしきれるわけではありませんが、だれが何を集めているかを考えると、どのカードを出したら勝ちに繋がりやすいか、はある程度は見えるようになっています。ほかのトリックテイキングではあまり考えたりしないない視点で考えさせられて、非常に面白いゲームになっています。

文章を見てよく分からないと思った方も、いちどプレイすれば、すぐにわかります。この不思議な魅力のあるゲームを楽しんでみてはいかがでしょうか。見栄えも素敵なので本棚に置いていても良いかも? おすすめのゲームです!

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